評論

発明家と哲学者が同居する宮内紀子の多面的な視点

宮内紀子氏は、身近な事柄をテーマに扱いながらも、伝統とオリジナリティー、美しい色彩と哲学的な視点を織り交ぜた作品により、多くの人々を魅了しています。そこに込められた感情や想いは観る者の心深くに語りかけ、体験したことのない感動をもたらします。

宮内氏の作品に見られる抽象的表現は、1950年代末から1960年代にかけてアメリカで生まれた抽象表現主義の画家たち、たとえば、ウィレム・デ・クーニングやマーク・ロスコらの歴史的名作を髣髴とさせながらも、色彩感覚は宮内氏のほうが繊細さにおいて優れています。色同士が上質なメロディーのように響き合い、柔らかで調和的なセンスを感じさせます。

宮内作品において、青と黄色は特別な存在感を放ち、目を惹きつけてやみません。ある作品では青の持つ詩情を引き出すことでドラマチックさを演出し、また別の作品では、黄色の持つ暖かく柔らかな印象や作品にエネルギーを与える効果を巧みに利用するなど、宮内氏は色の性質を研究し、十分に活かすことに長けています。自然界にもっとも多く見られる青と黄色をふんだんに使った宮内氏の作品に触れるたびに、私たちは心の安らぎと癒しを感じられるのではないでしょうか。移りゆくこの世の森羅万象のエネルギーや詩的さを、見るものに伝えているのです。独自の表現方法によって自然の理を描き出し、それらの永遠の調和についての美しい物語を紡ぎ出しています。

また、作品に見られる「縄」のモチーフも注目すべきものです。絡み合った縄が何のシンボルなのか……不自由さや解決できない問題といったニュアンスを帯びた縄のモチーフは、宮内氏の複雑な内面や哲学的な一面を顕わにします。身近な花や植物を描いた作品でさえ、抽象と具象のイメージが組み合わされているため、どこか幻想的な雰囲気をまとい、不思議な魅力に満ちています。

ここにある作品を通じて、宮内紀子氏の極めて高い表現力と豊かな感性に一貫して触れると、発明家であり、哲学者の視点を持つ彼女が見出したアイデアを共有することができるはずです。夢のようにゆっくりと楽しめ、いつまでも記憶に残る体験となるでしょう。

エルミタージュ美術館学芸員
アレクセイ・ボゴリュボフ

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